言語の本質

『言語の本質 -ことばはどう生まれ、進化したか』(今井むつみ、秋田喜美)

非常にスリリングな本だった。
一般に言語学では周縁の分野と認識されている、それでいて二人の著者がこの上なく偏愛する「オノマトペ」を切り口に、言語に迫る。

なかでも、オノマトペが身体性とリンクしているがゆえに、子供が言語を習得するにあたっての取っ掛かりとなり、かつ言語という広大な抽象概念とを架橋する存在でもある(大意)、という洞察は、私自身が幼い子供たちを目の前にして、日々体験する現在進行形の実感と相俟って目から鱗だ。
そしてそれは、ソシュール以来の言語の恣意性という大原則をも覆すものなのであった。

ここでも「ゆる言語学ラジオ」大活躍(笑)
紹介されている【赤ちゃんミステイクアワード】はどれも本当に興味深い。
言語学者にとってこれほど気軽にアクセスできる宝の山もなかろう。集合知の賜物やなあ。

で、たまたま図書館から借りて同時に読んでた本でも似たようなことが書かれてて驚いた。

『動物たちは何をしゃべっているのか』(山極寿一、鈴木俊貴)

ご存知ゴリラ研究の山極寿一先生と、シジュウカラ研究の鈴木俊貴さんという若き研究者の対談本だ。
お二人の専門は動物のコミュニケーションなのだが、そこから通して見える人間のコミュニケーション、そして言語への考察へ話は進む。図らずも先の「言語の本質」と問題意識は共通しているのであった。

山極先生の言うところのインファント・ダイレクテッド・スピーチ(大人から赤ちゃんへの話しかけ)なんて、人間からペット(動物)への言葉そのものだし、まさに身体と結びついたオノマトペ的な語法と共通するよね。
そして山極先生の関心は、音楽や踊りといった、より身体的、根源的なコミュニケーションへと展開する。さすがや。

言葉はたくさんあるコミュニケーション手段の一つに過ぎなかった。ところが、現代社会ではその地位が極端に高くなってしまっている。(P.167)

これは、敬愛する西江雅之先生が手を変え品を変え、何十年も前から主張されてたことでもあるな。慧眼!

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えんたく(Entak)

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