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<写経シリーズ7> 彼らの時代は

「ああもう阿呆くさなるわ。電話かけても出えへんし、LINE既読になってるのに返信ないし。今日だってたまたまここで会わへんかったらそのまま音沙汰なしやったやろ。この二ヵ月ほんま苦しかってん。正直に言うわ、合コンは行った。一人とはチュウまでした。それはしゃあないやろ。だってそっちが連絡くれへんかってんもん。でもあかんわ。どうしてもお前がええわって思ってまうねん」
この人、何か一生懸命だなあとアズサは思った。あの日の一度きりのことがそんなに忘れられないのだろうか。酔ってたとはいえ、大したサービスをした覚えはないぞ。そんな相性良かったっけ。
「ごめんね、連絡できなくって」
「いや、あれからいろいろ考えてん。おれなりのケジメっていうかな。彼女とはもう何もしてないで。ほんでこの前正直に言ってん。他に好きな子ができたって。間違いなく運命やからって。ほんじゃあ散々言われたわ。馬鹿じゃないの、遊ばれてるだけに決まってるじゃん、とか。でもおれはそうは思わんねん。ちゃうか?」
「うん。そうだね」
「どっちの意味やねんなそれ!」
カオルはちょっと作り物なんじゃないかっていうくらい大仰に苦い顔をしている。君は歌舞伎役者か、アズサは心の中で突っ込み返す。でも思ったより面白い人かもしれないな。
「とにかくよ、おれはもう彼女とは別れた。フリーや」
「どうして別れちゃったの?」
「どうして!?」カオルのしかめっ面度がさらに増す。「ほんまええ加減にしいや自分。初めて会ったときから何回も言ってるやん。おれはお前に一目惚れしたんやて。いろいろムカツくことされても、っていうか何もされてないことがムカツくねんけど、それでもやっぱお前と付き合いたいと思うし、お前とやったらおれ、絶対上手くやってけると思うねんな」
こういうふうに何の衒いもなく、やたら自分を押し出してくる人ってたまにいる。彼のそういうところは素直にすごいなと感心した。
でも、こういう話を道端で立ったまま聞くと、彼の向かってくるエネルギーでアズサは思わず後ろに倒れそうになって、それでとりあえず駅に向かってまた歩き始めた。

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